「砂の原野・霊告」
― 海に出た、眩しい。波打ち際に、なにか赤いかたまりが打ち上げられているのが見える。そちらの方に近づいてゆく―
足元に、赤い大イカの胴体。ヒレがまだ少し動いている。濡れた表皮は、かつての水面の耀い夢に見ているように、色素泡を淡くざわめかせている。 まえに、何処かで会ったことがある気がする。周りには人も鳥もいない。 自然が、自分に何かを告げている。意味はわからないが、遠い祖先から繰り返し受けている、ある深刻なメッセージである。
海の方へ目を遣る。砂浜、遠く水平線までつらなる砂の原野。キスの群れが砂上を滑ってゆく。