カニが死んでいた
2008年8月3日
めずらしく夜泣きがひどく、夜明け前、独りで散歩に連れて行った。はじめて来た少し遠い公園、街灯の下を通ると突然騒々しい音がした。見上げると、ぞっとするほどの蝉の大群が、灯の周りを飛びはじめた。鳴き声と、蝉同士が、或いは金属やガラスに甲羅が当たる音がけたたましく響いた。何匹か地面にぽと、ぽとと落ちてきて、よく見ると足元には蝉の死骸が点々としていた。恐ろしくなって、公園を通るのをやめて引き返した。
子どもはいつのまにか乳母車で寝ていて、帰る頃には夜が明けかかっていた。
黒から紺、青と空の色が薄くなっていき、薄紅色の雲が 紫に縁取られてたなびいていた。山頂で見る朝は、きっとこうだろうと思った。
部屋に入ると妻が、「虫が死ぬ夢を見ていた」と言った。休んだ後、アトリエに入ると、飼っていたカニが死んでいた。